仕組み債の問題点

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仕組み債の問題点

最大の問題点は、“商品を売却するマーケットが不存在”

商品先物であれば、市場が存在し、投資をして損を出し始めたとなれば、マーケット(市場)で、好きなときに売却して損切りできる。これにより、損失は、最小限に食い止められる。両建等の方法でリスクへッジすることも可能である。すなわち、自分の自助努力で、被害の拡大の防止、さらには、回復も可能となる。しかし、仕組み債では、それが不可能である。

商品先物では、リスクの説明が厳密に求められており、不招請招致のルールもある。ところが、商品先物よりも格段にリスクが大きい仕組み債で、リスクをほとんど説明しないで販売する実務がはびこっている。これは、まさに脅威である。

仕組み債は、売却するマーケットが不存在であるということから、商品先物に比べ、このように比較にならないほどリスクが大きい商品である。

20年・30年債という長期債の危険性

為替に関する投資家で、20年、30年間その商品を保持しようとするものはいないであろう。為替の予測は難しく、そのような長期の予測をする事は不可能だからである。30年という長さは、価格変動性リスク、信用リスクを問うレベルをはるかに超えている。

仕組み債は、3年や5年という比較的短期の商品もある。このような商品も、リスクは大きいが、商品の購入者で困った事態に陥るものの多くは、長期債を購入したものである。

長期債の購入者は、早期償還できない場合には、途中での契約から離脱を予定して購入しているはずである。
実際は、さらに、「早期償還できるので、心配要らないですよ」という、セールストークにのってしまっているのであろう。
ところが、円高になってしまい、早期償還できず、金利ゼロで持ち続けなければならないという事になり、大問題となるのである。
販売者に、解約してくれというと、時価が、購入額の、20%とか、30%とか言われ、解約すると大損することに気づく。かといって、資金を、長期寝かしておくわけにも行かない。

これが、仕組み債で大きな損失を発生させるメカニズムである。となれば、勧誘時、販売時における、販売者の説明責任が重要となる。

説明責任の重大な違反

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発行体は、商品設計にあたり、売り側に利益が出るよう自己に有利に設計する。設計指針としては、発行体としての自己の設計利益、販売する会社にも利益が出るようにしている。しかし、設計内容はブラックボックス化しており、リスクを、購入者側で管理が全く出来ない。
円高になれば、損をする事まではわかっても、それにより、いかなる状況下でどれだけ損するかは、購入者には全くわからない。推測する手がかりもない状況である。購入時だけでなく、現段階でも不明である。

商品に対する情報は、ほとんど100対0の関係である。かように、情報ギャップが極端なときは、情報を把握し、コントロールできる売主 = 発行体側は、高度の説明責任を負うというべきである。

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ブラックボックス化している中身は、高度な金融工学の知識がなければ理解できないものであり、そのもの自体は、一般者が理解できないものである。
しかし、購入するかどうかの判断に必要なリスクの説明は、時期、為替相場の価格のシミュレーションによるサンプル例を示せば可能であり、そのサンプル例の作成は容易である。

一方で説明が容易であり、他方にとってはそれが極めて重要な意義を持つ情報については、それを開示して説明すべき義務は、高度なはずである。

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仕組み債には、売却のための市場が用意されていない。そのため、購入者としては、リスクを最小限にとどめようとする努力のチャンスがなく、リスクを回避する方法が限られてしまう事となる。

商品先物等であれば、投資に失敗したと判断すれば市場で売却し、あるいは、両建てをするなどの手段を講じて、損害の回避を図れる。商品先物取引と比べ、仕組み債は、比べ物にならないほど危険な商品である。

となれば、危険性に比例して、売主の説明責任も高度化すべきものである。

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さらに、発行体は、為替市場で常時ディーリングをしており、徹底したリスク管理が可能であり、リスクヘッジだけでなく、何重にもカバー取引が可能となる。このように、リスク回避の手段が極端に不平等な場合には、リスク管理の手段をほとんど持たない買い手に対し、売り手側の説明責任は、高度であるべきである。

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仕組み債は、20年、30年という長期の契約関係である。20年、30年先の経済状況は誰も予測できない。ましてや、為替相場では、予想は不可能である。
このような長期債では、損が生じたときに、どう離脱するかが重要となる。投資家は、売却する市場がないので、損が出たら、契約解除するか、売却して、離脱すればよいと考える。
仕組み債は、早期償還がなされれば、例えば、14,5%の利益が得られる。となれば、リスクは同程度の損と予想するのは普通の投資家心理である。ことに、早期に離脱すれば、損害はより少ないはずと考えるのが、一般投資家の理解である。

ところが、契約から離脱を申し入れると、販売者は、離脱は転売しかなく、しかも、本件商品の時価は、例えば購入価格のわずか17,5%であり、その金額でしか転売できないという(時価が半分程度という例もあるが、それでも、損害としては、異常に大きいといわざるを得ないであろう)。
この、17,5%という数字に対し、なぜそうなるのか、なぜ、82,5%でないのか。この疑問に対する被告からの説明は、全くない。もちろん、購入時にもなかったものである。

転売にあたり、1割や2割の減額でなく、8割以上の減額というのは、一般人の常識を超える。購入者にとっては、まさしく、予測可能性を超える事態であり、このような結果になるという事については、購入時に説明があるべきであるが、その説明は、全くなかったものである。
仮に、17,5%という数字が正しいとしても、その計算式は、全くブラックボックス化している。ブラックショールズモデル等を駆使しているのであろうが、素人たる購入者には、その内容は全く不明である。

仮に本件商品が、契約から離脱するに当たり、一般の投資家が予想するのと隔絶した損失が出るのであれば、そのことを理解させるだけの情報提供義務が、購入時においてあるべきである。

以上に述べた説明義務は、金融商品の販売等に関する法律3条に明示されている、契約者としての信義則上要求される説明義務であり、その違反は重大である。
購入者は、あきらめることなく、説明義務違反を根拠に、損害の回復を図るべきである。
裁判所においても、この説明義務違反は重大として、購入者に損害賠償の支払いを命ずる判例が続出している。

仕組み債に関する判決の検証

野村証券事件——株価連動型の仕組み債

(平成25年2月4日 最高裁決定)

事案
商品:株価連動型の仕組み債
販売者:野村証券
判決

平成25年2月4日、最高裁第三小法廷の上告不受理の決定により、野村証券に約1億3600万円の支払いを命じる二審大阪高裁判決が確定した。
原審大阪高裁平成24年5月22日判決では、野村証券に約1億3600万円の支払いを命じたが、50%の過失相殺を認める。一審では購入者側が全面敗訴していた。

  • 商品内容はいくつかの商品で構成されていたが、仕組みが複雑難解で、早期償還、ノックイン価格、トリガー価格、クーポンは利率が変動するデジタル型や条件が複雑なパワー型などの条件が付いていた。
    購入者には、円高のなかで約2億2800万円の損失が出た。
  • 大阪高裁は、公序良俗違反や錯誤、適合性原則違反の主張は認めなかったが、説明義務違反は認めた。
    専門家が分析すると、株式より不利な面やリターンリよりリスクが大きい面があるのに、それが見えにくいと言った難解な商品であるのに、本件商品は、市場性、流通性にかけ、途中売却の可否、あるいは価格、方法も明示されておらず不透明であるとし、野村証券は、かような商品を販売するときには「自己責任において自らの投資意向に沿うかどうかを見極めて適切な投資判断ができるよう、本件商品の特徴やリスク等を十分に説明して、その理解を得させるべき義務を負っていた」が、本件ではそれを怠ったとした。
  • なお、購入者が得た利益、つまり利金については、証券会社が損害確定前の買付け代金を運用していることの対価として、損益相殺に供することは否定した。
コメント

本判決は説明義務違反を認めた点では高く評価できる。しかし、過失相殺を5割としたのは疑問である。本件のような複雑な商品では、購入者は適格な判断が期待できるだけの情報は全く得ていなかったので、過失は無いと言うべきだからである。
ただ、判決が、購入者が得た利益を損害から差し引くことを認めなかったことは重要であり、今後の訴訟において損害額の算定にあたり活用すべき論理である。

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